グローバリゼーションがバリアを減らし、距離を縮め、知識や経験、その他メリットの共有をたやすく したことは事実である。そのことにより、我々ひとりひとりがステレオタイプを脱して何かを学び、試して みる可能性に対してよりオープンになっていることもまた、少なからぬ事実だろう。ワインもまた例外で はない。

世界のワイン消費者は、この20年間に特別な執拗さをもって作り上げられた特定の味わいに隷従す る者の決まり文句によって、ステレオタイプ化されてきた。新たなワイン生産国の出現に伴うフランス 原産品種の拡大は凄まじく、結果、ほぼ常に単一の品種から造られる、比較的似通ったワインがもたら された。テロワールの課題はセカンドプランに押しやられ、多くの団体がその関心を単一品種ワインの 生産に集中させてきた。消費者にワインを買わせるよう仕向けるためのもっとも重要なモチベーション として、品種のタイプを利用したのだ。

より注意深いワイン愛好家や消費者は、ワイン生産国でのその出現率の高さから“国際的”と認識さ れるフランスの品種名を覚え始めた。マーケティングの領域においては、非常によく構想され、類まれ な形で発展した戦略だった。その証拠に、“ニューワールド”と呼ばれるワインの大半が様々な市場で莫 大な成功を収め、そのいくつかには、伝統あるヨーロッパの市場までもが含まれている。

特定のスタイルやテイストに対する過大評価も、市場に流通しているワインをふたつの大きなクラス に分割した要因だ。飲みやすい白ワインと、色が濃くフルーティーで、オーク樽での熟成が目立つしっか りした赤ワイン。主要な国際的刊行物は、これらのワインを賞賛することに飽きもせず、気前のよい評価 を与えた。そのことは、グローバルなワイン産業に同じ個性をもつワインを造り続けることを奨励し、消 費者をデフォルト化されたスタイルへと誘導するのに役立った。しかし、私たちは人それぞれであり、ワ インの典型的な消費者がこのようなワインの飲み方、楽しみ方に従う義務があるのだろうか? ワイン は清涼飲料水を飲むのと同じではない、あるいは、ワインは単にオーク樽での熟成をテイスティングす るほど均一化されてはいないと信じる者たちには、進むべきほかの道がある。多彩な、そして同じく魅 力的でずっと優れた、しかも適正価格のオプションは豊富だ。

これらのオルタナティブは、少量であれ、中量、あるいはいくつかのケースにおけるかなりボリューム のある生産も含め、ブティックワインである。 世界中の数十の市場に流通しており、ワイン評論家の多くは国際的パノラマにおいて、その秀逸なクオ リティと差異を評価している。これらは、小さいながら多様性に富んだ領土と、いにしえの知恵と最新の 技術、科学的知識とのコンビネーションを表現するワインだ。しかも、これらのワインは、250を超えるネ イティブ品種という貴重で類まれな財産から生み出される。Vitis Vinifera種に属する膨大な数の遺伝的 遺産が、たったひとつの国に独占的に集結しているのだ。ポルトガルには、シャルドネ、ソーヴィニョン・

ブラン、カベルネ・ソーヴィニョン、メルローなどの国際品種が存在することもまた事実である。しかし、 これらはブドウ畑の非常にわずかなパーセンテージを占め、さながら“塩コショウ”程度に用いられる程 度だ。ポルトガルワインの価値は特に、アルヴァリーニョ、エンクルザード、バガ、トウリガ・ナショナル等 々といった品種に見出される。これらのブドウが、一般大衆から隔たれ、従来型の市場の端っこに佇む 独特のワインを生み出すのだ。だからこそ、とびきり面白いのである。

 ポルトガルのブドウとワインの遺産は、もうひとつの特徴を横顔にもつ。それは、単一の品種それ自 体を表立たせることが稀であるということ。いくつかの例外(白ではアルヴァリーニョとエンクルザード、 赤ではトウリガ・ナショナルとバガ)を除き、ポルトガルワインの強みはブレンドの技にあるのだ。二種、 三種、四種、あるいは十種の異なる品種からひとつのワインを造りあげる技。かつては、ほとんどの場合 ブドウ畑の混植がブレンドの仕上がりを決定していたが、今日では、植付の区画化といったブドウ栽培 技術の進化により、各品種の価値を評価することが可能になった。こうして、ワイナリーにおけるブレン ドの技は、醸造家の熟達した腕に委ねられることとなったのだ。

 成功を収めたコンビネーションの例は無数にある。白ワインにおけるアリント/フェルナォン・ピレス のブレンドは、バイラーダ、ベイラス、リスボン、テージョ各地方ですでに定番だ。アリントは清涼感と長 命さを、ポルトガルでもっとも栽培されている白ブドウのフェルナォン・ピレスは、アロマの豊かさをブ レンドにもたらす。アレンテージョ地方において一般的であり、同地方ワイン文化のシンボル、ペラ・マ ンカの赤でも知られる、トリンカデイラ/アラゴネスのブレンドにも言及してよいだろう。トリンカデイ ラは、色調の濃厚さ、フローラルなニュアンス、長期熟成のキャパシティを与え、アラゴネスのほうは、ス パイスのノートとエレガントなファイナルタッチを伴う赤い果実のアロマを提供する。ドウロ地方にお いて一般的で、好結果が約束されたコンビネーションのいくつかにもふれてみよう。トウリガ・ナショナ ルは、スミレのフローラルノート、優れたバランスと長期熟成の高いポテンシャルを、トウリガ・フランカ は濃厚な色調、果実のアロマ、しっかりとしたタンニンを保証する。これらのブレンドは、ボディがありな がらエレガントなワインを生み出し、バルカ・ヴェーリャやその他ドウロ・スぺリオール・プレミアムのワ インも、このコンビネーションをベースにしてきた。

 また、ポルトガル品種をほかの国際品種とブレンドすることも可能だ。ポルトガル品種がブレンドに 骨格と個性を構築する一方で、国際品種はそれらのワインに対して塩コショウのように機能し、より幅 のある味わいのプロフィールとアロマのニュアンスを創り出す。アリント/シャルドネ、アラゴネス/カ ベルネ・ソーヴィニョン、トウリガ・ナショナル/シラーの組み合わせは、カジュアルな場に適した早飲み タイプのワインを想定したブレンドにしばしば用いられる。

 その幅広いレンジのオプションにより、ポルトガルワインはどんな場面にもチョイスすることが可能だ。 日常からパーティーシーンまで、食事のひとときからアペリティフ、または食後酒として。ポルトガルワイン の入手は、それを得た人に間違いなくもたらされる大きな満足に比すれば、決して高価なものではない。

ジョゼ・ジョアォン・サントス