ダォン地方のワインに通じる主な特徴は、赤であれ白であれ、酸とアルコール、凝縮したアロマといった、すべての パートによって成り立つ絶妙なバランスの良さにある。これらの要素が組み合わさり、グラス一杯のエレガントなワ インを生み出すのだ。
当地方は、ワインの生産を念頭に作られたともいえ、その目的においてこれ以上の条件は望めないだろう。カラムー ロ山脈、ブサコ山脈、ナーヴ山脈、エストレーラ山脈の尾根に囲まれるダォン地方は、寒風、大西洋の夏の雨雲、大陸 の嵐などから完全に保護されている。山々のバリアの内側に広がるこの地方は、より暑い西部、より寒い北部と東部 のコントラストを有し、デリケートに波打つ丘が深い谷や森、山々の斜面をつないでいる。気候に関しては、冬は寒く 多湿、夏は相対的に晴れて暑く、乾燥している。しかし、夏の終わりには早々に気温が下がり始めるため、果実の成熟 が時間をかけてゆっくりと続き、複雑なアロマの発展を可能にするのだ。
ブドウ園は、砕かれた片岩または花崗岩を土壌とする山岳の高地に位置し、平均標高は海抜400メートルから500メ ートル、しばしば800メートルに達する。ブドウの木々は、完璧な成熟を確約することを目的に、最高の日照を受けるべ く注意深く配置される。この要素が、ミネラルを含むクリアな酸に魅惑的なアロマ、個性、力強さの組み合わさった先 天的なバランスを、ダォン・ワインにもたらすのだ。
かつて、いくらかのダォン・ワインは、古い木樽で過度に熟成させることによって、エレガントでフルーティーな個性を大きく 損なっていた。しかし、現在では、比較的新しいオーク樽でのより短い熟成プロセス、あるいはオークでの熟成を行わないこ とによって、ワイン本来のクオリティを引き出すことが可能になった。当地方の主要な赤ワインは、リーダー品種であるトウリ ガ・ナショナルを少なくとも50%以上含む傾向がみられ、一般的にアルフロシェイロ、ティンタ・ロリスとブレンドされる。
すべてのダォン・ワインが黒ブドウ品種を使用するわけではなく、白品種、とりわけエンクルザードを使った白ワイン もますます良くなってきている。
ブドウ園の大半は、数世代に渡って同じ家族に属するものだ。三万を超えるブドウ栽培者のうち、一部の非常に小規 模な農地をもつ農家が、DOCワイン用のブドウの約半分を生産している。協同組合の存在もここでは非常に重要で、 現在では近代的なテクノロジーを導入している。しかしながら、ワインにおけるクオリティーの領域を改革したのは、 規模の大小を問わず、個人の生産者であった。
推奨白ブドウ品種: エンクルザード、ビカル、セルシアル・ブランコ、マルヴァジア・フィーナ。
推奨黒ブドウ品種: トウリガ・ナショナル、アルフロシェイロ、ジャエン、アラゴネス、ルフェッテ。